バッテリーは車のエンジン始動をはじめ、電装品への電力供給や電圧安定化という3つの重要な役割を果たしており、定期的なメンテナンスや交換が必要です。
メンテナンスの中でも、液面点検は重要で、少なくとも1カ月に1回、または自動車の走行距離や運行時の状態などから適切な時期に点検をしてください。
バッテリーの液面点検を怠っていると、爆発など重大な故障が起こる可能性があり大変危険です。
この記事では、車のバッテリー液の役割や液面点検の必要性、液面点検の方法、補水時の注意点などを詳しく解説します。定期点検を正しく行い、突然のバッテリートラブルを防ぎましょう。
目次
1. 車のバッテリー液の役割
バッテリー液は、硫酸を精製水で希釈した無臭の液体(希硫酸)です。希硫酸は失明ややけど、機器腐食などの原因となるため取り扱いには充分な注意が必要です。本章ではこのバッテリー液の役割についてご説明します。
バッテリー液の役割
バッテリー液は次のような役割を担っています。
- 充放電作用:充放電の過程で、正極と負極の間の硫酸分の動きを媒介する
- 極板の腐食防止:極板(鉛合金)が空気中に露出し劣化することによって起こるバッテリーの短寿命化や爆発を防止する
バッテリー液が減る理由
バッテリー液が減る主な2つの理由をご説明します。
1つ目は自然蒸発です。従来の液式タイプのバッテリーでは液口栓の排気孔を通じて、また排気パイプ付タイプのバッテリーでは排気機構を通じて水分が蒸発します。夏場や高温下の使用が続くと液減りしやすくなります。
2つ目には充電による電気分解です。
バッテリーの充電時、バッテリー液に含まれる水の電気分解が起こり、水素と酸素に液口栓などから発散することでバッテリー液が減少します。特に過充電時は進行しますが、液減りだけでなく、極板などバッテリー内部の劣化を早める原因となります。早めの交換を検討しましょう。
近年の自家用乗用車バッテリー(液式タイプ)は、液減りしづらい極板を採用した設計ですが、安全のため液面の点検は必要です。
一方、一部のハイブリッド車用に採用されるVRLAタイプは化学反応によって発生したガスを吸収し、内部に戻すことができる仕組みになっているため補水は不要です。
2. 車のバッテリー液面点検の必要性
鉛バッテリーはバッテリー液が減った状態で使い続けると、爆発するリスクがあり大変危険です。
バッテリーの極板が液に浸かっていない場合、極板が露出して錆び(腐食)が発生します。さらに使用を続けるとその錆びから火花が発生し、充電により生じた水素ガスに引火し爆発を起こす恐れがあります。極板が液面にしっかりと浸かっている状態であれば、腐食や火花は発生しません。そのため液面点検と補水が必要不可欠です。定期的にバッテリー液量を確認し、LOWER LEVEL(最低液面線)を下回らないように気を付けましょう。
自動車用バッテリーは、近年では極板にカルシウム合金を使用したタイプのバッテリーが広く使われています。このタイプは自己放電が少なく、液減りも少ないため、まれに「メンテナンスフリー」と呼ばれることがありますが、完全なメンテナンスフリーではないため、定期的な点検が必要ですのでご注意ください。
突然のバッテリー上がりに見舞われないよう、バッテリーを定期的に点検し、必要に応じて補充電や補水を行うことが大切です。
3. 車のバッテリー液面点検の方法
それでは車のバッテリー液面点検の方法をご紹介します。
バッテリーの液面点検の事前準備
バッテリーの液面点検には、次のアイテムが必要です。
- 保護メガネ
- ゴム手袋
希硫酸(バッテリー液)は失明ややけど、機器腐食を起こす危険な液体のため、液面点検の際はしっかりと保護することが大切です。
白色電槽の液面点検方法
バッテリーの液面点検には、次のアイテムが必要です。
- バッテリー本体を横から見る
- 液面がLOWER LEVEL(最低液面線)とUPPER LEVEL(最高液面線)の中間以下の場合は、最高液面線まで補水する
※最低液面線を下回ると劣化や爆発事故の原因となり大変危険です。
色付き電槽の液面点検方法
色付き電槽や側面に液面線のないバッテリーの場合、以下の手順で液面点検を行います。
- 液口栓を開けて注液口を上から覗く
- 極板が歪まず板状に見える場合は、液面が最高液面線に達していませんので、補充液(精製水)を補充する
※液面が最高液面線に達している場合、表面張力により極板が歪んで見えます。
インジケータで簡易確認ができるタイプもありますが、電池全体の内一部分の液量しか確認できませんので、上記の点検方法を参考にしながら、定期的に点検も実施してください。
4. バッテリーに補水するときの注意点
精製水を補充する
バッテリーに補水する場合は、必ず精製水を入れてください。精製水とは、不純物を取り除いた水(純水)のことです。井戸水や水道水を使用すると、バッテリー内部に異金属(不純物)が入り、自己放電が大きくなったり、寿命が短くなったりする可能性があります。
精製水はカー用品店やホームセンターなどで数百円程度で販売されています。
また補充の際、希硫酸は絶対に使用しないでください。
最高液面線を超えて入れない
最高液面線にまで精製水を入れてください。最高液面線を超えると、バッテリー液が溢れ出る可能性があります。バッテリー液は腐食性の強い希硫酸ですので、バッテリー付近の車体や部品を腐食させてしまいます。必ず最高液面線を越えて補水しないようにしてください。
こぼれたら拭き取る
バッテリー液や精製水がこぼれたら、静電気を発生させないよう湿った布できれいに拭き取るようにしてください。また、バッテリーの天面が汚れていると、汚れの炭化などによりターミナルから漏電したり、液口栓の排気孔が詰まり爆発する危険があります。汚れは放置せず、常に清潔に保つようにしましょう。
5. 定期点検でバッテリーの状態を正確に把握しよう
バッテリーの液面点検時は、バッテリー内部の点検とともに外観点検も行うことが推奨されます。
外観点検では、電槽の異常やふたの汚れ、端子の腐食や破損などを確認します。バッテリー本体に膨らみや劣化の兆候が見られた場合は、補水だけでは解決しない場合があるため、普段お世話になっているカーディーラーや整備工場、バッテリー販売店などで相談してください。
さらに、バッテリー液の状態は、液量や外観だけでは判断できません。テスター点検やプロによる比重測定が有効です。比重測定時にはバッテリー液の濁りなども確認できるますので、バッテリー内部の状態をより正確に把握できます。
6. まとめ
バッテリー液は自然蒸発や水の電気分解などにより、徐々に減少します。バッテリー液が減り、極板が露出した状態で使い続けると、極板に腐食(サビ)が発生し、サビから火花が発生することで、引火爆発を起こす恐れがあり大変危険です。定期的な液面点検と補水を心がけましょう。
参考映像(自動車用鉛バッテリーの爆発)液面点検の結果、液面が最低液面線近くまで減少している場合は補水が必要です。水道水や井戸水では不純物により自己放電が大きくなる可能性があるため、必ず精製水を使用してください。