ハイブリッド車もエンジン車同様に3~4週間乗らないだけで、暗電流や自己放電によって補機用バッテリーが上がってしまいます。ハイブリッド車の補機用バッテリーが上がってしまった時の対処方法は、搭載場所の違いなどによりエンジン車とは異なりますので注意が必要です。
今回は、ハイブリッド車のバッテリーの種類や上がってしまった時の充電方法について詳しく解説します。
目次
1. ハイブリッド車の2種類のバッテリー
ハイブリッド車にはバッテリーが2種類搭載されています。それぞれの役割と充電の必要性についてご紹介します。
駆動用メインバッテリー | 補機用バッテリー | |
---|---|---|
種類 | 駆動用メインバッテリー: ニッケル水素電池またはリチウムイオン電池 |
補機用バッテリー: 鉛蓄電池(12V) |
役割 | 駆動用メインバッテリー: ・モーター駆動 ・エンジン始動 ・電装品への電力供給 |
補機用バッテリー: ・ハイブリッドシステムの起動 ・駐車中のバックアップメモリー ・ハイブリッドシステムが起動していない時の電装品への電力供給 ・電圧安定化 |
搭載場所※ | 駆動用メインバッテリー: センターコンソール内など |
補機用バッテリー: トランクルームや後部座席下などの車室内が多いが、エンジンルームに搭載されている車種もある |
※車種により異なります。
1)駆動用メインバッテリー
駆動用メインバッテリーは、モーター駆動やエンジン始動、電装品への電力供給を担います。ニッケル水素電池やリチウムイオン電池が一般的で、高電圧かつ大容量で寿命が長いため、基本的に交換する必要がありません。
減速時の回生ブレーキにより回生充電(車両が減速するときの力を使って短時間でバッテリーを充電する仕組みのこと)されるため、充電器などを用いて充電する必要はありません(PHEV車は除く)。
2)補機用バッテリー
補機用バッテリーの役割
補機用バッテリーはガソリン車と同じ12Vの鉛蓄電池です。ハイブリッドシステムの起動や駐車中のバックアップメモリー、ハイブリッドシステムが起動していない時の電装品への電力供給、電圧安定化の役割を担っています。
駆動用メインバッテリーと異なり、3~5年で寿命を迎えるため、定期的な交換が必要です。
補機用バッテリーの種類
補機用バッテリーは搭載される場所によって種類が異なります。
トランクルームや後部座席下などの車室内に搭載される場合、VRLA(Valve-Regulated Lead-Acid)の制御弁式タイプが適しています。
VRLA(制御弁式)タイプは、化学反応による酸霧や水素ガスの発生が少なく、酸素ガスをマイナス極板で吸収します。また、万一、過充電などが起きた場合は、制御弁が開きバッテリー内部のガスが排気パイプを通じて車外へ放出される仕組みになっています。そのため、車室内への搭載はVRLA(制御弁式)タイプが適しています。
一方、エンジンルーム(車室外)に搭載される場合、多くのガソリン車と同様に開放式バッテリーが搭載されています。
バッテリー上がり
補機用バッテリーは走行中に充電されますが、車を使用しない時もコンピューター(ECU)、カーナビなど電装品のバックアップ電源として、バッテリーの電気を常時5~10mA程度消費しています(暗電流)。そのため、3~4週間乗らないだけで、バッテリー上がりを起こすことがあります(バッテリーサイズや状態、車載の電装品により異なります)。
また、バッテリーは気温の影響を受けやすく、夏は暑さで自己放電し、冬は寒さでバッテリー性能が下がり電気が取り出しにくくなります。
補機用バッテリーが上がるとハイブリッドシステムが起動できませんので、車が動かせなくなります。暗電流や自己放電によるバッテリー上がりを防ぐために、定期的に走行充電することが大切です。
2. ハイブリッド車の補機用バッテリーの充電方法
万が一、補機用バッテリーが上がり、車が動かせなくなってしまった時には、補機用バッテリーを充電または交換する必要があります。
こちらでは、ハイブリッド車の補機用バッテリーの充電方法をご紹介します。
VRLA(制御弁式)タイプと開放式タイプは充電方法が異なりますのでご注意ください。
1)充電器で充電する
※必ず充電器の取扱説明書をご確認の上、充電を行ってください。
※火気のない風通しの良い所で行ってください。
VRLA(制御弁式)バッテリーの場合
VRLA(制御弁式)タイプの補機用バッテリーを充電器で充電する手順をご紹介します。
VRLA(制御弁式)タイプ対応の充電器を使用するか、指定の充電条件(充電電流、充電時間)を守ってください。また、急速充電は絶対にしないでください。
- 車両からバッテリーを外す
- 電圧を測定する
・端子電圧12.5V以下の場合は充電が必要です。
・電圧計をお持ちの場合は、充電状態を確認し、充電時の目安としてください。 - 充電開始
・充電電圧は電池の容量毎に異なりますので、バッテリーの取扱説明書でご確認ください。
・充電時間は表1が目安で5~10時間です。10時間以上は充電しないでください。10時間を越えても充電が完了しない場合には、充電を止めてください。所定の充電時間を越えて充電するとバッテリーの異常(表漏液、発熱、爆発など)の原因となる可能性があります。
・充電中、バッテリーからヒューやシューといった音が出た場合は、過充電により内部の圧力が上昇したことで制御弁が開きガスが放出されている状態です。直ちに充電を停止してください。 ※急速充電は絶対にしないでください。過充電によりバッテリーが膨れたり、最悪のケースでは爆発する可能性があります。
開放式バッテリーの場合
開放式バッテリーを充電器で充電する手順をご紹介します。
- 車両からバッテリーを外す
- バッテリーの液口栓を取り外す
- バッテリー液量を確認する
・液量が「LOWER LEVEL」以下の場合は必ず補水してください。 - 充電開始
・充電時間の目安は、普通充電電流で放電程度によって5~10時間です。
※充電時間は電池の容量や放電程度により異なります。
・充電完了の目安は、どの液口からも盛んにガスが発生している状態(ガッシング)です。 - バッテリー液口栓を取り付ける
・充電完了後は30分程度放置し、ガスが抜けてから液口栓を確実に取り付けてください。
2)車両販売店やバッテリー販売店に充電を依頼する
車両販売店やバッテリー販売店に依頼し、充電してもらう方法もあります。
ハイブリッド車の補機用バッテリーは、トランクルームや後部座席下に設置されており、個人での確認や取り外しが難しい場合もあります。
充電トラブルを防ぐためにも、充電にお困りの際は、お近くの車両販売店やバッテリー販売店に早めにご相談ください。
≪参考≫
ハイブリッド車の補機用バッテリーが上がり、車が動かせなくなった時の対処として、ジャンピングがあります。詳しは、こちらの記事で紹介していますのでご覧ください。
3. 補機用バッテリーの劣化のサインとは?交換が必要なケース
次の場合は、補機用バッテリーの劣化が進み、寿命が近づいている可能性があります。充電しても回復しない可能性があるため、交換をご検討ください。
- 補機用バッテリーの使用期間が3~5年を越えている
- 補機用バッテリーの充電不足のアラートが頻繁に出る
- 何度もバッテリーが上がる
補機用バッテリーはハイブリッドシステムを起動する役割のため、ガソリン車のような「エンジンがかかりにくい」「ヘッドライトが暗い」といった劣化のサインが見られません。そのため、気が付かないうちに劣化が進み、突然バッテリー上がりに見舞われることも考えられます。
お出かけ前や外出先で困らないよう、定期的な点検及び交換が大切です。
4. ハイブリッド車の補機用バッテリーを長持ちさせる方法
補機用バッテリーの寿命は3~5年ですが、短距離・短時間走行が続いたり、車に乗らない期間が長く放電状態が続いたりすると劣化が進みやすくなり、短寿命の原因となります。
補機用バッテリーを長持ちさせるには、1~2週間に1回は1時間以上走行充電することを心掛けましょう。また、車両販売店やバッテリー販売店で定期的に点検やメンテナンスを受けることをおすすめします。
5. まとめ
ハイブリッド車には駆動用メインバッテリーと補機用バッテリーの2種類のバッテリーが搭載されています。
補機用バッテリーが上がるとハイブリッドシステムが起動できず、車が動かせなくなりますので、定期的な点検と交換が必要です。
補機用バッテリーには搭載場所の違いにより VRLA(制御弁式)タイプと開放式の2種類があり、それぞれ用いる充電器や充電方法が異なります。不安な方はお近くの車両販売店やバッテリー販売店にご相談することをおすすめします。