ハイブリッド車でもバッテリー上がりは起こります。しかし、バッテリーの種類や役割がガソリン車とは異なるため、ハイブリッド車特有の対処法を知っておくことが必要です。
この記事では、ハイブリッド車の補機用バッテリー上がりの原因や3つの対処法について詳しく解説します。
目次
1. ハイブリッド車のバッテリー上がりについて
まずは、ハイブリッド車の「バッテリー上がり」が指す意味を確認しましょう。
ハイブリッド車のバッテリー上がりは“補機用バッテリーが上がる”ことを指す
ハイブリッド車には駆動用メインバッテリーと補機用バッテリーの2種類が搭載されています。ハイブリッド車のバッテリー上がりとは、一般的に補機用バッテリーが上がることを指しています。駆動用メインバッテリーに十分な容量があっても、補機用バッテリーが上がってしまうと、車を動かせなくなってしまいます。
駆動用メインバッテリー | 補機用バッテリー | |
---|---|---|
種類 | 駆動用メインバッテリー: ニッケル水素電池またはリチウムイオン電池 |
補機用バッテリー: 鉛蓄電池(12V) |
役割 | 駆動用メインバッテリー: ・モーター駆動 ・エンジン始動 ・電装品への電力供給 |
補機用バッテリー: ・ハイブリッドシステムの起動 ・駐車中のバックアップメモリー ・ハイブリッドシステムが起動していない時の電装品への電力供給 ・電圧安定化 |
搭載場所※ | 駆動用メインバッテリー: センターコンソール内など |
補機用バッテリー: トランクルームや後部座席下などの車室内が多いが、エンジンルームに搭載されている車種もある |
※車種により異なります。
補機用バッテリーの役割
補機用バッテリーはガソリン車と同じ12Vの鉛蓄電池です。ハイブリッドシステムの起動や駐車中のバックアップメモリー、ハイブリッドシステムが起動していない時の電装品への電力供給、電圧安定化の役割を担っています。
駆動用メインバッテリーと補機用バッテリーは相互充電できない
ハイブリッド車の駆動用メインバッテリーと補機用バッテリーとでは互いに電圧が異なるため、補機用バッテリーが上がっても駆動用バッテリーから充電することはできません。
補機用バッテリーが上がってしまった場合は、ジャンピングか補機用バッテリーの充電または交換が必要です。
2. ハイブリッド車のバッテリー上がりの原因
ハイブリッド車の補機用バッテリーが上がる主な原因は駐車時の放電です。
車は使用しない時もコンピューター(ECU)、カーナビなど電装品のバックアップ電源として、バッテリーの電気を常時5~10mA程度消費しています(暗電流)。そのため、3~4週間乗らないだけで、バッテリー上がりを起こすことがあります(バッテリーサイズや状態、車載の電装品により異なります)。
また、半ドアやライトの消し忘れなど人為的なミスが原因でバッテリー上がりを起こすこともあります。
3. ハイブリッド車のバッテリー上がりの対処法
ハイブリッド車のバッテリー上がりの対処法を3つご紹介します。
ジャンピングスタート
ハイブリッド車のバッテリー上がりはガソリン車同様、ジャンピングスタートで対処できます。ジャンピングスタートには救援車(ガソリン車)とブースターケーブルが必要です。
多くのハイブリッド車はVRLA(制御弁式)タイプの補機用バッテリーが車室内に搭載されているため、エンジンルームのヒューズボックス内にある救援端子でジャンピング可能です。補機用バッテリーがエンジンルームに搭載されている場合、アクセスが簡単なため救援端子はありません。開放式バッテリーのジャンピング方法はこちらをご参考ください。
※車両の取扱説明書をご確認の上、ジャンピング作業を行ってください。
- トラブル車と救援車のバッテリーが12Vかつ同容量(サイズ)であることを確認する
- トラブル車も救援車もパーキングブレーキをかけ、ハイブリッドシステムをOFFにする
- トラブル車のボンネットを開けてヒューズボックス内の救援端子のカバーを開ける
※接続位置は車種の取扱説明書で確認する - 赤色のブースターケーブルをトラブル車の補機用バッテリーの救援端子につなぐ
- 赤色のブースターケーブルのもう一方の端を救援車のバッテリーの+端子につなぐ
- 黒色のブースターケーブルを救援車のバッテリーの-端子につなぐ
- 黒色のブースターケーブルのもう一方の端を固定された未塗装の金属部につなぐ
※接続位置は車種の取扱説明書で確認する - パーキングブレーキがかかっていることを確認した上で、救援車のギアをニュートラルにしてアクセルを踏む
- トラブル車のパワースイッチがOFFのままいずれかのドアを開閉する
- ハイブリッドシステムを起動する
- ブースターケーブルをつないだ時と逆の手順で外す
充電
VRLA(制御弁式)タイプに対応する充電器で、補機用バッテリーを充電する方法もあります。放電によるバッテリー上がりであれば充電で回復します。
ただし、ガソリン車はエンジンルームにバッテリーが搭載されているため充電が容易ですが、ハイブリッド車の補機用バッテリーはトランクルームや後部座席下に設置されているVRLA(制御弁式)タイプが多く、不慣れだと取り外しが難しく感じるかもしれません。
VRLA(制御弁式)タイプの充電方法はこちらでご紹介しておりますのでご覧ください。
バッテリー交換
放電状態で長期間放置し劣化が進んでいる場合や、バッテリーが寿命を迎えた場合などは、ジャンピングスタートや充電をしても再び使用できませんので、バッテリーを交換しましょう。
駆動用メインバッテリーは基本的に交換の必要がありませんが、補機用バッテリーは3~5年で寿命を迎えるため定期的な交換が必要です。3年以上使用してバッテリーが上がった場合は、新品への交換をご検討ください。
4. ハイブリッド車のバッテリー上がりを防ぐために
ハイブリッド車のバッテリー上がりを防ぐためには、1~2週間に1回は1時間以上走行充電したり、駐車後にルームライトの消し忘れがないかチェックをしたりしましょう。
また、車両購入店やバッテリー販売店などでバッテリー点検を受けるなど、日頃からメンテナンスを心掛けましょう。
しかし、補機用バッテリーは車室内に搭載されていることが多く取り出しにくいため、こまめな点検が難しい場合もあります。このような場合には、突然のバッテリー上がりに見舞われないためにも、車検時を目安に定期的な交換をご検討ください。
5. まとめ
ハイブリッド車は駆動用メインバッテリーと補機用の12V鉛バッテリーの2種類を搭載しており、補機用バッテリーが上がるとハイブリッドシステムが起動できず車を動かすことができません。
また、駆動用メインバッテリーと補機用バッテリーは相互充電できません。補機用バッテリーが上がったら、ジャンピングスタートや充電器による充電、また新品への交換を検討してください。
バッテリー上がりを防ぐためには、定期的な走行充電をはじめ、こまめなメンテナンスと定期的な交換をおすすめします。